ジャパンエンジンとGuangzhou Diesel Engine Factory、エンジン以外の収益の柱
ジャパンエンジンコーポレーションは、新しい船のエンジンを売る代金のほかに、どこからお金を得ているのか?
新しい船のエンジン(主機関)を造船所や船主に引き渡した代金のほかに、エンジンの修理、部品の供給、そして中国のライセンシーがエンジンを造って売ったことによるロイヤリティーからも収入を得ています。2026年3月期は主機関の売上高が約142億円、修理・部品等の売上高が約155億円で、修理・部品等が主機関を上回りました。中国のライセンシーGuangzhou Diesel Engine Factory向けの売上高は約43億円でした。
造船所・船主:主機関の顧客・中国のライセンシー:Guangzhou Diesel Engine Factory
- ジャパンエンジンコーポレーション→造船所・船主:主機関(船のエンジン)の引き渡し(製品を引き渡した時点で売上に計上される)
- 造船所・船主→ジャパンエンジンコーポレーション:主機関の代金(2026年3月期の主機関の売上高は約142億円)
- ジャパンエンジンコーポレーション→中国のライセンシー:エンジンを造る権利(ライセンス)の供与(供与先がライセンス契約に基づいて製品を製造・販売する)
- 中国のライセンシー→ジャパンエンジンコーポレーション:ロイヤリティー(ライセンス収入)
国の補助金
ジャパンエンジンコーポレーションは、新しい燃料のエンジン開発や新工場の投資にあたり、国の基金事業の補助金を受け取っています。2026年3月期は営業外収益の補助金収入が約10億円(前期は約3.3億円)、特別利益の補助金収入が約6.9億円(前期は約1.1億円)でした。
収益
主機関の売上は、製品を引き渡した時点で収益になります。修理・部品等には、主機関の修理、部品の供給、ライセンス、他製品向けの取込工事が含まれます。ライセンス事業の収益は、ライセンス供与先が製品を製造・販売したことによるロイヤリティー収入です。
2026年3月期の主機関の売上高は約142億円、修理・部品等は約155億円でした。2025年3月期は主機関が約168億円、修理・部品等が約121億円、2024年3月期は主機関が約95億円、修理・部品等が約115億円でした。2020年3月期(連結)は主機関約35億円、修理・部品等約66億円、合計約102億円でした。
2026年3月期の主機関の売上の説明と実績
2025年6月24日の有価証券報告書で、会社は2026年3月期について「舶用内燃機関で一時的に減収となるものの、修理・部品等の事業拡大による増収が継続」すると説明しました。実績は、主機関が約142億円で前期より減り、修理・部品等が約155億円で前期より増えました。会社は主機関の減収の理由に「操業負荷調整と、客先要求納期に応じた売上計上期のばらつきの影響」を挙げています。判定(記録どおり):計画どおり(主機関は減収、修理・部品等は増収)。
地域別の売上高は、顧客の所在地を基礎にしています。2026年3月期は日本が約236億円、アジアが約59億円(うち中国約53億円)、その他が約1.5億円でした。2025年3月期は日本約248億円、アジア約38億円(うち中国約32億円)、その他約1.9億円、2024年3月期は日本約171億円、アジア約37億円(うち中国約32億円)、その他約1.8億円でした。最大の取引先は中国のライセンシーGuangzhou Diesel Engine Factoryで、2026年3月期の売上高は約43億円、総販売実績の14.5%です。
主機関は引き渡した時点で売上になるため、受注はいったん積み上がります。2026年3月期末の受注高は約368億円、受注残高は約345億円(うち主機関約267億円、修理・部品等約78億円)でした。2025年3月期末は受注高約297億円、受注残高約274億円(うち主機関約215億円)、2024年3月末の残存履行義務(まだ売上にしていない契約の額)の総額は約265億円でした。会社は主機関の「生産枠取り(内示案件)を3年程度先まで」取得済みと説明しています。受注残を売上にする見込みの期間は、2025年3月期末の「1年から3年」から、2026年3月期末は「1年から4年」に変わりました。
主機関と修理・部品等の売上は毎期入れ替わりがあり、2026年3月期は修理・部品等が主機関を上回りました。
事業と経費
研究開発費は2025年3月期約10億円から2026年3月期約18億円になりました。設備投資の総額は2025年3月期約53億円から2026年3月期約6.7億円でした。
アンモニア・水素燃料エンジンの初号機の計画と実績
2025年6月24日の有価証券報告書で、会社は初号機の完成を「アンモニアは2026年3月期を、水素は2027年3月期を、各々予定」していました。実績は、アンモニア燃料エンジンが「2025年8月に初号機を完成」し、水素燃料エンジンは「水素燃料を使用した検証運転を開始」し、2026年5月14日時点で「2026年度内に完成・出荷予定」です。判定(記録どおり):途中(アンモニアは予定の期に完成、水素は完成前)。
有価証券報告書の人材の目標では、女性社員比率20%に対し実績は2025年3月期15.2%、2026年3月期14.0%でした。新卒採用人数は目標2025年3月期10人・2026年3月期15人に対し、実績は8人・13人でした。外国籍社員比率は目標10%に対し実績6.3%でした。
アンモニア燃料エンジンは初号機が完成し、水素燃料エンジンは検証運転の段階です。
利益と資本
経常利益は2024年3月期約35億円、2025年3月期約54億円、2026年3月期約64億円でした。会社は「経営指標としては、「経常利益」を重視」すると説明しています。営業利益は2024年3月期約22億円、2025年3月期約51億円、2026年3月期約55億円でした。
株主資本コストを上回るROEの実現
会社は2025年5月13日の第2次中期事業計画で、株主資本コストを「9%程度」と見積もりました。2026年3月期の自己資本利益率(ROE)は29.5%でした。判定(記録どおり):上回った。2026年5月14日の資料では、株主資本コストの見積りは「12%程度」に変更され、同じ資料のROEは「有価証券報告書で使用する計算式に準拠」して算出すると注記されています。2025年3月期のROEは、有価証券報告書では36.6%、2025年5月13日の資料では31.2%と、資料によって値が異なります。
株主への還元
2026年3月期の配当予想と実績
会社は2025年5月13日に2026年3月期の年間配当を80円と予想しました。実績の年間配当は88円でした。判定(記録どおり):上回った。
配当性向を高めつつ増配する計画
会社は2025年5月13日の第2次中期事業計画で「配当性向を現状よりも徐々に高めつつ」連続増配する方針を示しました。配当性向は2025年3月期14.7%から2026年3月期15.5%に上がりました。判定(記録どおり):途中(配当性向は14.7%から15.5%へ上がった。計画期間は2027年度まで)。
1株当たり配当額は、2022年3月期22.00円、2023年3月期40.00円、2024年3月期130.00円(分割前)、2025年3月期116.00円(中間配当は分割前の額)、2026年3月期88.00円でした。2024年10月1日に1株を3株に分割しています。会社は「株主の皆様への安定的な配当を継続的に実施することを重視」すると説明しています。2026年3月期の自己株式の取得は約113万円(キャッシュ・フロー上はマイナス約113万円)で、取締役会決議による取得の状況には該当がありません。
2026年3月期の配当は期初の予想を上回り、配当性向は上がる方向で推移しています。
資本の使い道と計画
新工場(ゼロエミッション船等の建造促進 補助事業)は、重油と脱炭素燃料を合わせたエンジン生産能力を「現状の約1.5倍」にする計画で、事業期間は2024年度〜2028年度です。2026年5月14日時点では「建設工事が進捗中」で、会社は「2028年度からの新工場稼働で、更なる事業拡大を目指す」と説明しています。
第2次中期事業計画では、2026年度の売上高目標を300億円、経常利益目標を60億円、2027年度の売上高目標を330億円、経常利益目標を66億円としています。会社はこの期間中に「過去最高の売上高・利益の連続更新を目指す」と説明しています。さらに先の中長期目標として、売上高500億円、経常利益100億円を示しています。
新工場と中期事業計画は、現在進行中の投資と目標です。
まとめ
ジャパンエンジンコーポレーションは、新しい主機関を引き渡した代金のほかに、修理・部品の供給や中国のライセンシーからのロイヤリティーを含む「修理・部品等」の売上から収益を得ています。配当は期初の予想を上回り、配当性向は上がる方向で推移しています。アンモニア燃料エンジンは初号機が完成し、水素燃料エンジンは検証運転の段階で、新工場の建設も進行中です。
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次の決算注目ポイント
- 主機関と修理・部品等の売上高(有価証券報告書の販売実績・収益の分解情報の頁)
- 中国のライセンシーGuangzhou Diesel Engine Factory向けの売上高(有価証券報告書の主要な顧客の頁)
- 受注高・受注残高と、主機関・修理・部品等それぞれの受注残高(有価証券報告書の生産、受注及び販売の状況の頁)
- 水素燃料エンジン初号機の完成・出荷の有無(有価証券報告書の研究開発活動の頁、進捗状況のご報告)
- 新工場の建設進捗と完成予定時期(進捗状況のご報告)
- 配当性向と年間配当額(有価証券報告書の主要な経営指標等の推移の頁)
補足表
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 約210億円 | 約289億円 | 約297億円 |
| 経常利益 | 約35億円 | 約54億円 | 約64億円 |
| 1株配当 | 130.00円 | 116.00円 | 88.00円 |
| 配当性向 | 14.3% | 14.7% | 15.5% |
| 日本向け売上高 | 約171億円 | 約248億円 | 約236億円 |
| うち中国向け売上高 | 約32億円 | 約32億円 | 約53億円 |
| 受注残高 | 約265億円 | 約274億円 | 約345億円 |
注:単体の値です。配当性向のうち2026年3月期は本文の「配当性向を高めつつ増配する計画」の節で説明しています。
用語
| 用語 | このレポートでの意味 |
|---|---|
| 主機関 | 船を走らせる大きなエンジン本体 |
| 修理・部品等 | エンジンの修理、部品の販売、ライセンス、他社の製品向けの工事をまとめた売上の区分 |
| ライセンス事業の収益 | 他の会社に自社のエンジンを造る権利を与え、その会社が造って売った分に応じて受け取る代金(ロイヤリティー) |
| 顧客の所在地 | エンジンや部品を買った会社がどの国・地域にあるか |
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